平成24年3月19日(月) 15:20 更新
以下の解説は、更新された時点での情報であり、今後東京電力(株)福島第一原子力発電所事故の状況の変化や政策等の変更によって、一部記載と異なる場合があります。予めご了解ください。
- 原子力発電所の事故によって大気中に放出された放射性物質は、人にどのような影響がありますか。被ばくした量との関係、特に100ミリシーベルト(mSv)の意味について教えて下さい。
- シーベルトという単位について、改めて教えてください。
- 等価線量 とはなんですか?
- 内部被ばくと外部被ばくでは、内部被ばくの方が影響が大きいのではないですか?
- 内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とはなんですか?
- 人工放射線と自然放射線とで、人体への影響に違いがありますか?
- 微量の尿中セシウムによって膀胱がんが増加するのでしょうか?
- 母乳への移行はどれくらいですか(放射性ヨウ素)
- 母乳への移行はどれくらいですか(放射性セシウム)
- 普通に暮らしていても日常生活で被ばくしているというのは本当でしょうか?
- 今後妊娠しても大丈夫でしょうか?
- 私は妊婦です。放射線の影響はありませんか?
- 規制値内の食品であっても少し心配です。妊婦や子どもへの影響はありますか?
- 放射線を浴びると、妊娠しにくくなったりすることがありますか?
- 首都圏に住んでいますが、事故から数日後に雨に濡れました。健康に影響はないでしょうか?
- 室内が暑いときに、窓を開けて良いですか?服装や洗濯物の取り扱いについても教えてください。
- プールに入っても大丈夫ですか?
- 今でも雨に濡れないようにすべきでしょうか?
- 首都圏に住んでいますが、外出を避けたほうがいいですか? いまでも放射線のレベルが高い場所があります。大丈夫でしょうか?
- 3月22日に東京都の金町浄水場の水道水に、1リットルあたり210ベクレルの放射性ヨウ素が含まれていると報道がありました。今でもペットボトルの水を調理などに使用しています。水道水を使っても大丈夫でしょうか?
- 放射性物質が含まれた水道水を、シャワーやうがい、歯磨きなどに使っても大丈夫ですか?
- 放射性ヨウ素を含んだ水を沸騰すると、放射性ヨウ素が蒸発すると聞きましたが、本当ですか? 浄水器等で濾過できますか?
- 放射性物質で汚染された食べ物のことが報道されていますが、野菜などを食べる際に気をつけることはありますか?
- 学校給食に使用される野菜は大丈夫ですか?
- お店で売っている魚や肉は食べても大丈夫ですか?
- 放射性物質で汚染されている水産物が市場に流通しているのではないですか?
- 放射性セシウムが溜まりやすい食品はありますか(野菜など)
- 放射性セシウムが溜まりやすい食品はありますか?魚などの水産物中の放射性物質について、教えてください。
- 今回の原発事故以前にも食品中にセシウムやストロンチウムが入っていたのですか?
- 食品、上水中の放射性物質はなぜセシウム134、セシウム137、やヨウ素131の濃度しか発表されないのですか?
- ストロンチウム90はどのように測定するのですか?
- 土壌や農林水産物等の環境試料中のプルトニウムはどのように測定するのですか?
- 報道で伝えられる数値の意味を教えて下さい。
- 被ばくの検査(外部の汚染検査)をしてほしいのですが、できますか?
- 被ばくの検査(内部の汚染検査)をしてほしいのですが、できますか?
- ホールボディカウンター測定で、何が分かりますか?
- 尿中のセシウムで内部被爆を推定できますか? また事故前にはどうだったのですか?
- 子どもの甲状腺がんのリスクはどれくらいですか?
- 福島県から避難されてきた方を受け入れても大丈夫ですか?
- 人での放射性物質の除染とは、どのようなことを行うのですか? 家でもできますか?
- 避難地域、屋内退避地域の住民ですが、避難する時に着た服や、汚染検査で放射能が検出された服はどうすれば良いですか?
- 個人で放射線量を測りたいのですが、測定器の種類によって違いはありますか?
- 庭の放射線量を測りましたが、空間線量率の高い場所がありました。なぜですか?
- 安定ヨウ素剤はどのように服用すれば良いですか?
- 一度体内に取り込まれた放射性ヨウ素はどうなるのでしょうか?
- 東京に住んでいます。これから福島県でボランティア活動をしたいのですが、被ばくが心配です。安定ヨウ素剤は入手できますか?
- 安定ヨウ素剤に代わるものはありませんか? カリウムがよいと聞きましたが、バナナを食べるのはどうでしょうか?
- 私は甲状腺機能亢進症で加療中ですが、水道水中の放射性ヨウ素の影響は大丈夫でしょうか?
- 私にはヨードアレルギーがあります。安定ヨウ素剤は飲めないのでしょうか? 量を減らしても駄目でしょうか?
- ヨードアレルギーです。今回首都圏に降下した放射性ヨウ素でアレルギーが起きるでしょうか?
- 私は橋本病(慢性甲状腺炎)と診断されており、特に加療はしていませんが、経過観察中です。今回の原発事故で放射性ヨウ素のことがよく言われていますが、病気への影響はありませんか?
- 布団を4時間くらい外に干しました。甲状腺の手術の既往がありますが、その布団に寝ても大丈夫でしょうか?
- 東京電力福島第一原子力発電所の敷地内で微量のプルトニウムが検出されたようですが、健康への影響はありませんか?
- 今回の事故に対してとられている放射線に関する基準は、外国に比べて甘いのではないですか?
- 放射線の単位について
- 古い論文を見ていたら、放射能の単位として「c」や「Ci」が出てきました、これは何ですか?
- 乳児用の粉ミルクから放射性セシウムが検出されたと報道がありましたが、どのくらいの量なのでしょうか?
- ストロンチウムは骨に蓄積されるので危険だと聞きました。食品中のストロンチウム量についての規制は無いのでしょうか?(その1.規制について)
- 雨の日は空間線量率が高いのですが、今でも放射性物質が降ってきているのでしょうか?
- ヨウ素131は半減期が短いため、今調べてもどれくらい被ばくしたのかわからないと聞きました。子どもが本当はたくさん被ばくしていて、将来甲状腺がんになってしまうのではないかと心配でたまりません。
- チェルノブイリ事故のあと、周辺地域に住んでいた子ども達に甲状腺がんが多発したと聞きました。実際にはどれくらいの線量を被ばくしていたのでしょうか?
- 放射線加重係数とは、何でしょうか?
- 組織加重係数とは、何ですか?(NEW)
- なぜ小さい子どもはホールボディカウンタ測定の対象になっていないのですか?
- 一日分の尿ならある程度の被ばく量が推定できると聞き、がんばって子どもの尿を集め、測定してもらいました。この測定値から、どのように被ばく量を推定するのでしょうか。
- サーベイメータや線量計の測定値がSvで表示されているのは、実効線量を表しているのでしょうか?
- ストロンチウムは骨に蓄積されるので、危険だと聞きました。食品中のストロンチウム量についての規制は無いのでしょうか。(その2.骨への蓄積について)
- ストロンチウム90が、今回の原発事故の前から日本にあったと聞いたのですが本当ですか?
- 近所で線量率の高い場所を見つけた場合は、どうしたら良いのでしょうか?
- 庭などで線量率の高い場所ができることがあると聞きました。どのような場所でしょうか? また、除染の方法を教えてください。
- 放射性セシウムによる内部被ばくがとても心配です。放射性セシウムを体から排出させるのに効く薬があると聞きましたが、飲むことができますか?
- ホールボディカウンタによる内部評価の評価法が変わると聞きましたが、どういう事でしょうか?
- 3月8日に発表されたプルトニウムに関する論文の概略を教えてください。
- 3月8日に発表された論文のプルトニウムの量は本当に健康に問題ないのでしょうか?
- プルトニウム241とはどういう放射性核種ですか?
- プルトニウム241が放出されるということは予測されていなかったのでしょうか?
- 今回検出されたプルトニウムの量は、事故前に検出されたプルトニウムの量にくらべてどうだったのでしょうか? また昨年、文部科学省がプルトニウムを検出していますが、それと比較して今回の値はどうだったのでしょうか?
- 過去にプルトニウム241が検出されたことはありますか?
- 今回検出されたプルトニウム241の結果から、どれくらい被ばくすると考えられますか?
- プルトニウム241の食品への移行が気になりますが?
- 今回報道されているプルトニウム239、240、241はどのように測定したのでしょうか? 放医研に測定を依頼することは可能ですか?
1.原子力発電所の事故によって大気中に放出された放射性物質は、人にどのような影響がありますか。被ばくした量との関係、特に100ミリシーベルト(mSv)の意味について教えて下さい。
大気中に放出された放射性物質は、地表面や建物などに沈着して、環境中にとどまることがあります。この場合、地面等からガンマ線を受けますが、体外にある放射性物質からの被ばくですので、外部被ばくと分類されます。
一方、大気中の放射性物質の吸入、放射性物質により汚染した飲料水や農作物を摂取することにより、体内に取り込まれた放射性物質による被ばくが考えられます。こちらは内部被ばくと呼ばれます。
放射線に被ばくすると健康に影響を及ぼすことがありますが、内部被ばく、外部被ばくに関係なく、その影響の程度や種類は受けた放射線の量(以下線量といいます)に依存します。長期的な影響として、受けた線量が高いほど数年後から数十年後にがんになる危険性が高まると考えられています。
下の図をご覧ください。がんは放射線だけでなく、食事、喫煙、ウィルス、大気汚染など様々な要因によって発症すると考えられます。起こった個々のがんが放射線によるものであると特定することはできません。従って、放射線でがんが起きているかどうかを検証するには、多くの集団において、受けた線量とともにがんが起こる確率も上昇するかどうかを調べる必要があります。原爆被爆者を主とした疫学調査では、およそ100ミリシーベルト以上の線量※では、線量とともにがん死亡が増加することが確認されています。およそ100ミリシーベルトまでの線量では、放射線とがんについての研究結果に一貫性はなく、放射線によりがん死亡が増えることを示す明確な証拠はありません。しかしながら放射線防護の目的のための� �重な考え方として、年間100ミリシーベルトまでゆっくりと被ばくする場合、放射線によるがん死亡が1,000ミリシーベルトあたりおよそ5%であるとされており、国際放射線防護委員会(ICRP)もこれを妥当であるとしています。
日本人は元々約30%(1,000人のうち300人)ががんで亡くなっています。この国際的な推定値を用いると、仮に1,000人の方が100ミリシーベルト※※の線量を受けたとすると、生涯にがんで亡くなる方が300人から305人に増加すると計算できます。ただし、ICRPは同時に、この仮定は確実ではないが起こる可能性のある障害を予防するという考え方であり、100ミリシーベルトよりもごく低い線量を合計して集団で出るがんなどの症例数を計算するといった影響の評価には不確実性が大きく、適切でないと述べています。
※この線量は臓器ごとに放射線感受性の重みづけをして足し合わせた実効線量と呼ばれる線量で、外部被ばくと内部被ばくを受けた場合はそれらを合計した線量です。「2.シーベルトという単位について、改めて教えてください。」もご参照ください。
※※ここで言う100ミリシーベルトとは年間の被ばく線量ではなく、これまで受けた積算線量です。また、この100ミリシーベルトには自然界から受ける放射線量(日本人で年間平均約1.5ミリシーベルト)は含まれません。(平成23年9月27日更新)
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2.シーベルトという単位について、改めて教えてください。
シーベルトという単位を使う数量はいろいろありますが、共通しているのは放射線の人体への影響の大きさを考慮した数量ということです。このとき、影響の大きさは確率的影響であるがんと遺伝性影響についてだけ考えています。
放射線が通ったときに人体が重量あたりに吸収するエネルギーを吸収線量(単位はグレイ、Gy)といいます。一言に放射線といっても、その種類やエネルギーの強さは様々であり、それによって吸収線量が同じでも人体への影響の大きさが変わります。 放射線の種類ごとに影響の大きさを重み付けする係数を放射線加重係数といい、吸収線量に放射線加重係数を掛けたものを等価線量(単位はシーベルト(Sv)。詳しくは、「3.等価線量 とはなんですか?」をご覧下さい。)といいます。また、臓器によって放射線による影響の受けやすさが違います。 個々の臓器への影響の大きさを重み付けする係数を組織加重係数といいます。臓器ごとに等価線量と組織加重係数をかけて、全身分を足し合わせたものが実効線量(単位はシーベルト、Sv)です。ですから、実効線量は全身の平均的な影響を考慮した放射線量を表します。
さらに、内部被ばくの場合には、放射性物質が体内に取り込まれてから排出されるまで放射線を受け続けますので、体内に取り込んだときから一生の間に受ける線量として考えます。これは預託線量と呼ばれ、単位は同じくシーベルト(Sv)です。(詳しくは、「5.内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とはなんですか?」をご覧下さい。)
このように、シーベルトで表される線量はいくつかありますが、いずれの場合でもシーベルトで表されているときには、被ばくの状態や放射線の種類などのさまざまな条件にかかわらず、一律に"影響の大きさ"を考慮した放射線量として表されています。実効線量が同じであれば、内部被ばくでも外部被ばくでも人体への影響の大きさは同じです。また内部被ばくと外部被ばくを足し算することなど、別々の被ばくの影響を足し算することもできます。
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3.等価線量 とはなんですか?
放射線は吸収線量が同じでも、種類によって人体への影響が違うことがあります。臓器や組織が吸収した線量に対し、放射線の種類ごとに影響の大きさを重み付けしたものを等価線量といいます。吸収線量に、放射線の種類による影響の強さの違いを補正するための係数(放射線加重係数といいます)を掛けて算出します。たとえば、ガンマ線とベータ線の放射線加重係数は1、アルファ線は20です。臓器によっては特異的に放射線の影響を受けやすく、実効線量での制限では規制が不十分と考えられるものについては等価線量で規制します。例えば、放射性ヨウ素の場合、甲状腺に特異的に集まり放射性ヨウ素から出る放射線が甲状腺組織に吸収されるので、防災指針では子どもの甲状腺の等価線量で判断します。
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4.内部被ばくと外部被ばくでは、内部被ばくの方が影響が大きいのではないですか?
同じ放射性物質の量(ベクレル、Bq)であれば、体の外にあるときと内部にあるときで影響が違います。外部被ばくではガンマ線だけの影響ですが、内部被ばくの場合は、ガンマ線に加えて飛ぶ力の弱いアルファ線やベータ線の影響を受ける場合があるので、それらの影響も考える必要があります。
また、放射性物質の種類によって、集積しやすい臓器がある場合は、その臓器への影響を個別に考慮する必要があります。これらのことを含めて人体への影響の評価のために考えられたものが実効線量(単位はシーベルト、Sv)です。
体内の放射性物質から受ける内部被ばくの実効線量は、摂取した放射性物質の量(ベクレル)に実効線量係数(シーベルト/ベクレル)を掛けることにより求められます。このようにして得られた実効線量を用いれば、内部被ばくの影響と外部被ばくの影響を同等に扱うことができます。同じ実効線量であれば内部被ばくでも外部被ばくでも影響の大きさは同じです。
また、外部被ばくによる実効線量と内部被ばくによる実効線量を足し合わせることもできます。内部被ばくの場合は特に「預託線量」と言って、その時に摂取した放射能から受ける一生分(大人は50年、子どもは70歳になるまでの年数)の総線量として計算されます。
「5.内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とはなんですか?」もご参照ください。
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5.内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とはなんですか?
内部被ばくの場合は、放射性物質が体内に摂取された後に一定期間体内に留まり、その間は放射線を受け続けることになります。そのため、内部被ばくによる線量は「預託線量」といって、1回に摂取した放射性物質から、将来にわたって受ける放射線の総量を考えます。
体内に取り込んだ放射性物質は、時間とともに体内から減少します。その原因の一つは放射性物質が時間とともに壊れていく物理的要因で、これにより放射性物質の量が半分になる時間を物理学的半減期といいます。物理学的半減期は放射性物質の種類によって決まっています。もう一つは、尿や大便などにより排泄される生物学的要因で、これにより体外から半量が排出される時間を生物学的半減期といいます。生物学的半減期は、元素の種類やその化学形態によって異なり、また年齢によっても異なってきます。預託線量はこのような違いを考慮して、ある放射性同位元素により人体が受ける放射線量について、一生分を積算した総量です。特に実効線量に着目して一生分を積算した線量を「預託実効線量」と呼びます。この時の一� ��分とは、大人は50年、子どもは70歳になるまでの年数です。
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6.人工放射線と自然放射線とで、人体への影響に違いがありますか?
放射線を出す放射性物質※には、セシウム137やストロンチウム90など、核実験や原子力発電などによって生成される人工放射性物質と、カリウム40やトリウム232など、天然に存在する自然放射性物質があります。人工放射性物質から放出される放射線を人工放射線、自然放射性物質から放出される放射線を自然放射線と言う事がありますが、人工放射線も自然放射線も物理的な放射線の種類としてはアルファ線、ベータ線、ガンマ線などであり、同じものです。そのため、同じ種類、同じエネルギー、同じ量の放射線が人体の同じ部位に当たった場合、人工放射線も自然放射線も影響は同じです。自然放射線は体に良く、人工放射線は体に悪いということはありません。内部被ばくの場合でも人体への影響は、放射性物質の化学的� ��性質と、放出する放射線の種類やエネルギーによって影響が違ってきますが、"自然"か"人工"かの違いで人体への影響が変わることはありません。
※この場合、厳密には放射性核種を指します。
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7.微量の尿中セシウムによって膀胱がんが増加するのでしょうか?
尿中セシウムによる膀胱がんの発生については、WHOならびにUNSCEARの報告において、チェルノブイリ事故による放射線被ばくによる健康影響では小児の甲状腺がん以外の根拠はないと結論付けられており、これが現在の世界的な多数意見です。微量の尿中セシウムによって、膀胱がんが増加したり、膀胱がんに進展する膀胱炎が起きたりすることはありません。
また、セシウム-137が6Bq/L存在することによる膀胱の被ばく線量は、自然放射性物質で通常我々が受けているK-40による被ばく線量のおよそ20分の一程度にすぎません。
詳しく知りたい方は、医療関係者向けページの、「尿中セシウムによる膀胱がんの発生について」をご覧下さい。
尿中セシウムによる膀胱がんの発生について [PDF 155KB]
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8.母乳への移行はどれくらいですか?(放射性ヨウ素)
安定ヨウ素(放射性ではないヨウ素)は、食品や飲料水として摂取した量の33%、呼吸を通して大気から体内へ取り込んだ量の11%が母乳に移行するとされています(ICRP Publication 95, Table 5.23.2)。そこで、放射性ヨウ素も同じ動き方をすると考えられますので、100ベクレルの放射性ヨウ素(ヨウ素131)を取り込んだと仮定すると、母乳に出てくる量を以下のように推定できます。
食品や飲料水の場合、100ベクレル×0.33=33ベクレル が母乳へ移行。
呼吸を通して、100ベクレル × 0.11 = 11ベクレル が母乳へ移行。
日本人では、食生活などの影響により、元々体内での安定ヨウ素量が多いため、母乳への放射性ヨウ素の移行はICRPの計算より少ないとする説もあります。
次に上記の飲食による場合、母乳による赤ちゃんの預託実効線量*(1回の摂取から受ける一生分の実効線量)を線量係数を用いて計算します。母乳へ移行した全量を赤ちゃんが飲んだと仮定すると、赤ちゃん(生後3ヶ月)の預託実効線量は
33ベクレル × 0.18マイクロシーベルト/ベクレル ≒ 5.9マイクロシーベルト
このときのお母さんの預託実効線量は
100ベクレル × 0.022マイクロシーベルト/ベクレル ≒ 2.2マイクロシーベルト
ヨウ素131 は、摂取すると甲状腺に特異的に集まるため、放射線防護上重要な核種の一つとされています。福島第一原発事故では、避難・屋内退避指示の他、ヨウ素131で汚染された水、原乳、野菜等の摂取制限や出荷制限等の措置が取られました。上記の計算から赤ちゃんの預託実効線量は母親のものより高くなること、暫定基準値レベルを守れば預託実効線量を低く押さえることができることが考えられます。 また、高い被ばくを受けた可能性がある地域の約1,000人の子供の甲状腺線量の測定では、半数には汚染は検出されず、また、甲状腺で100mSv(実効線量で5mSv)を超える内部被ばくは無かったと報告されました。(一番高い値は、簡易測定で100mSvの半分程度の値です。第67回 原子力安全委員会定例会議の配付資料「小児甲状腺被ばく調査結果説明会の結果について 」の7ページ目を参照)。
今後は、高い被ばくを受けた可能性のある地域の未成年者の個人線量評価(特に外部被ばくと内部被ばく別甲状腺線量)と健康調査に基づいて、事故直後の被ばく低減化措置が効果的であったかを確認することが重要です。なお、ヨウ素-131の半減期は約8日と短いため、現在、実質的には環境中に無いと考えられます。
関連リンク
第67回 原子力安全委員会定例会議配付資料「小児甲状腺被ばく調査結果説明会の結果について」
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9.母乳への移行はどれくらいですか?(放射性セシウム)
安定セシウム(放射性ではないセシウム)は、食品や飲料水として摂取した量の12%、呼吸を通して大気から体内へ取り込んだ量の4.3%が母乳に移行します(ICRP Publication 95, Table 5.24.1)。放射性セシウムも安定セシウムと同様の動きをすると考えられますので、100Bqの放射性セシウム( セシウム134とセシウム137 )を取り込んだと仮定すると母乳に出てくる量を以下のように推定できます。
食品や飲料水として100ベクレル摂取すると、
100ベクレル × 0.12 = 12ベクレルが母乳へ移行。
呼吸を通して100ベクレル摂取すると、
100ベクレル × 0.043 = 4.3ベクレルが母乳へ移行。
次に、上記の計算から100ベクレルの放射性セシウムを食品や飲料水として取り込んだ場合の被ばく量(預託実効線量※)を計算してみます。赤ちゃんが母乳の全量を飲み、セシウム134とセシウム137が同量とすると、換算係数を用いて下記のように計算します。
赤ちゃん(生後3ヶ月)の被ばくは
セシウム134は、12ベクレル ÷ 2 × 0.026マイクロシーベルト/ベクレル = 0.156マイクロシーベルト
セシウム137は、12ベクレル ÷ 2 × 0.021マイクロシーベルト/ベクレル = 0.126マイクロシーベルト
合計約0.3マイクロシーベルト
お母さんの被ばくは
セシウム134は、100ベクレル ÷ 2 × 0.019マイクロシーベルト/ベクレル = 0.95マイクロシーベルト
セシウム137は、100ベクレル ÷ 2 × 0.013マイクロシーベルト/ベクレル = 0.65マイクロシーベルト
合計1.6マイクロシーベルト